カテゴリー「書籍・雑誌」の14件の記事

『悲劇週間』矢作俊彦

 金曜日(5月26日)に読了した。とても面白かった。
 実在する詩人の堀口大学の二十歳の頃の物語で、彼は在メキシコ公使の息子としてメキシコに滞在し、メキシコの革命に遭遇。恋と革命の濃密な季節を過ごした……という物語。
 アウトライン自体は事実のようなんだが、中に書かれている詩とか文体とかどこまでがフィクションなのかなあ。
 矢作俊彦なら髪の毛ほどの事実から大きくふくらませることも十分可能とも思えるし、ほんとにどうなんだろう。
 描かれたのは「二十歳」であると思う。堀口大学という人物の人生を借りて、理想の、最も美しい二十歳を描いて見せたのだと受け取った。
 同時に19世紀末から20世紀初頭の世界情勢というの面白く読めた。パリ・コミューンと明治維新を結びつける人物やらハワイの歴史(これは著者がかつて『海から来たサムライ』に書いた)やら、明治維新の官軍と賊軍の心情的なしこりやら、朝鮮併合のいきさつやら、日露戦争に勝った事による世界の目やら、この当時のいろんな事が盛りだくさんのてんこ盛りでございます。
 人間は、えげつない殺し合いを平気でするもので、しかもそれは悪魔が取り憑いたとか狂ってるとかじゃなくて、日常的な感覚の延長にあるものだなあと思わせられた。ホリエモンの「利益を出せ」という程度の感覚で虐殺というのは簡単に起こり得るものなのだと思う。
 人間、高潔な魂を持ってそれを貫き通さねばダメだよねえ。

悲劇週間
悲劇週間
posted with 簡単リンクくん at 2006. 5.29
矢作 俊彦著
文芸春秋 (2005.12)
通常24時間以内に発送します。

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『上陸』五條瑛

上陸
上陸
posted with 簡単リンクくん at 2005. 5.16
五条 瑛
講談社 (2005.4)
ISBN : 4062128926
価格 : \1,785
通常24時間以内に発送します。








 中年の金満(かねみつ)、青年の安二、不法滞在者のアキムの肉体労働者3人組を主人公とした短編集。
 社会の底辺で生きる者たちに起きる様々な事件を切り取って生きることの切なさを見事に浮かび上がらせた。
 アキムは国に帰っちゃったから、もうこの続編はでないんだろうなあ。
 全体の流れとしては、その後に一人になってしまった金満が過去を振り返る形で各短編が配置されている。その金満は山形当たりの温泉地のホテル建設現場に流れ着いていて新年を温泉場のスナックで過ごしていて、そこのママさんとのやりとりもなかなか味わいがある。

※IEだと必要以上に改行が入って見えるかも。Firefoxだと丁度良くなるようになってます。

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『オバサンとサムライ』養老孟司・テリー伊藤

オバサンとサムライ
養老孟司著・テリー伊藤著

出版社 宝島社
発売日 2004.08
価格  ¥ 1,100(¥ 1,048)
ISBN  4796642005
日本人には武士道よりオバサン道だ! ベストセラー作家である養老孟司と、分析の鋭さ・批評性で右に出るものはいないとされるテリー伊藤が、真正面から「日本人はどうすれば元気を取り戻せるか」というテーマで論じ合う。 [bk1の内容紹介]

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 養老先生の本は刺激になるので良く読むのだが、対談だけにちょっと薄かったか。
 「自信」ということについて、「何かをやった」ことではなく「出来ない自分から出来る自分へ変わった」ことによって生じる。つまり、どれだけのことをしたかどうかはさして重要じゃないというのは印象的であった。
 ワシのかねてからの持論である「過激な平和主義」つまり「アメリカを敵に回してでも平和のために戦え(武力ではなく)!」に近い論(?)も展開されておるです。

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『白樺たちの大正』関川夏央

白樺たちの大正
関川夏央著

出版社 文芸春秋
発売日 2003.06
価格  ¥ 2,100(¥ 2,000)
ISBN  4163650601
武者小路実篤、志賀直哉がみた夢「新しき村」。それは約束の場所か、それとも世紀の愚行か。現代の原型がここに-。「窓外雨蕭々」と「白樺たちの大正八年」として雑誌『文学界』に連載された作品をもとにまとめる。 [bk1の内容紹介]

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 武者小路実篤と志賀直哉を中心に『大正時代』とはどういう時代であったかを論考したエッセイ(でいいのか?)
 実篤の「新しき村」については教科書で読んだ程度だったが(それは70年代のことである)、その時点での認識は「理想主義的なおぼっちゃんがしょうもないことに手を出して失敗した」というものであった。
 で、読んでみると、そういう側面は確かにあったが実際にはちょっと違った。
 一番びっくりしたのは「新しき村」は、今なお埼玉の片隅でしっかりと存在しているということである。事業体として年商何億かの規模になっているのだ。「新しき村」は成功していると言っていいだろう。(これ、ネタバレになっちゃうのかな?)
 明治15年生まれ前後で意識に違いがあるというのはおもしろい。要するにそこを境に漢籍のあるなし、つまり教育のベースががらりと変わったのだそうだ。新人類と旧人類みたいな区分けがやっぱりわけであり、白樺派の人たちは「近頃の若い者は何を考えてるのかわからん」が全国的なレベルで展開した最初の例ということなのかもしれない。世の中にどう向き合っていくのかということでは白樺も近頃のネット心中も大差ないのかもしれない(暴論?)。
 上記の説明にもあるように、今日の日本の原型がここで形作られたというのは納得。

 白樺派の作家達は基本的には働かなくても食えた人たちである。また、作家という職業は早々金になるわけでもなかった。ところがこの時期にある程度教育を受けた都市労働者というものが増え「市場」が出現する。現代に換算して「億」ほどの金が作家の懐に入るようになったのもこのころだ。
 そういた知らなかった歴史がわかって面白かった。

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『愚か者死すべし』原リョウ

愚か者死すべし
原リョウ著

出版社 早川書房
発売日 2004.11
価格  ¥ 1,680(¥ 1,600)
ISBN  4152086068

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 10年のブランクの後、沢崎が帰ってきた。
 やはり文章は極上品です。
 だが、ヒントの方が向こうからやって来る感じが強い。
 錦織や橋爪の登場の仕方にもご注目。
 って、ファンにはいちいち説明は不用だよなあ。
 原リョウをまだ読んだ事のない人は1作目の『そして夜は甦る』から読む事をお勧めする。
 というか原リョウ&沢崎の魅力にどっぷりと浸るためにはそれ以外の道は無い。

 自作はお待たせしないということなんだが、来年には読めるのだろうか?

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『虚無回廊1&2』小松左京

虚無回廊 1(ハルキ文庫)
小松左京著

出版社 角川春樹事務所
発売日 2000.05
価格  ¥ 580(¥ 552)
ISBN  4894566907
[bk1の内容紹介]

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 久々に本格的SF作品を手にしたなあ。
 結構、むずかしいことが書かれているのに読みにくさを感じないのは、やっぱり文章力があるからでしょうね。
 約5光年先の宇宙空間に超巨大な人工物と思われる物体が出現する。長さが「2光年」っちゅうんだからそのスケールのでかさが最高!
 その探査のためにAE(人工実存)が開発されて謎の物体に向かって送り出されるまでが1。
 AEは開発者とのみコミュニケーションできていたのだが、その開発者が死んでしまう(自殺のフシがある)ため、地球との交信を絶ったまま謎の物体に接近する。
 そのAEがその物体を探査する冒険が2。
 物体上には複数の知的生命が探査衛星を送り込んだり、足を踏み入れたりしていた。AEの冒険はそれらとの遭遇がメイン。そしてその物体が何らかのメッセージを発しているらしいというところでおしまい。
 繰り返すが、スケールの大きさにクラクラする。1億年も生きている「老人」とか最高。
 これは大いにお勧め。って、いまさらなのかな?

 ※この時点で2はbk1のリストから消えてます。3はまだ文庫化されてない。

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『古傷』東直己

古傷(光文社文庫)
東直己著

出版社 光文社
発売日 2004.11
価格  ¥ 500(¥ 476)
ISBN  4334737765
[bk1の内容紹介]

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 探偵の法間(のりま)謙一が主人公のシリーズ2作目。
 法間の音読みホウカンから「幇間」と渾名されるのは、実際に誰彼構わずヨイショせずにはいられないという性格に由来する。
 で、今作は何も起きない内に終わっちゃったという感じだな。
 作者の東直己氏は作品でもエッセイでも社会のシステムの中に存在する腐敗についてホトホトうんざりしているらしいとわかるのだが、本作では「現実にこんなことってあるんじゃない?」というのを作品に書いてみました……という印象。
 「現実」なので、何も解決しないわけなのよ。
 というわけで、この作品は東直己ファン以外にはお薦めしかねる。「幇間探偵」という設定はいいんだよね。これで2Hドラマの企画書書いてやろうかなとも思うが、先回の失敗があるのでやめとこ。

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『「世界」とはいやなものである~極東発、世紀をまたぐ視線~』関川夏央

「世界」とはいやなものである
関川夏央著

出版社 日本放送出版協会
発売日 2003.07
価格  ¥ 1,785(¥ 1,700)
ISBN  4140808063
朝鮮半島への時評的考察を中心に東アジア各地域への探訪記を加えた、極東随想・論考集。20世紀末から現在までの10余年を視野に、綿密な取材、浸透力溢れる筆致で綴る。極東の真実を識るための一冊。 [bk1の内容紹介]


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 20世紀末の10年間ほど極東アジアのロシア、朝鮮半島、中国についての評論。ラストは、拉致を北が認めた小泉訪朝についての怒りで締めくくられている。
 拉致問題を最初に知った時、正直言って半信半疑だった。そんなことして何の意味があるのかという考えが先に立ったのだ。
 それでも拉致を金正日が認めたということはびっくりした。日本側もびっくりして、適切な対処をするタイミングを逸したということなのかもしれない。
 でも、どうなるのかなあ? 93年ころに関川氏は、近いうちに北は解体するような予測をしているんだけど、結局、未だに生きながらえている。韓国はお荷物を背負うつもりはないらし。しかし、迷走をいつまでも続けていられるはずもなく……その辺のシミュレーションって日本政府はやってるのかなあ? やってないいような気がする。利権やら官僚の天下りとは関わりない問題だから。

 常識的な視線をキープしているのが関川夏央の魅力。
 結局のところ、マスコミ報道というものは近所に住む「スピーカー」等と渾名されるような噂話好きのおばちゃんと大差ないということを再確認。

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『どんどこ ももんちゃん』とよたかずひこさく・え

どんどこももんちゃん(ももんちゃんあそぼう)
とよたかずひこさく・え

出版社 童心社
発売日 2001.09
価格  ¥ 840(¥ 800)
ISBN  4494001368
どんどこ どんどこ どんどこ どんどこ ももんちゃんがいそいでいます。くまさんに通せんぼされても、転んで頭をぶつけても、それでもももんちゃんはいそいでいます。そんなにいそいでどこにいくの? [bk1の内容紹介]

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 子供(1歳半)用に買った本。バカ受け。いきなり7回連続で読まされた。
 ラストは子供にわかるのかな?

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『ロング・グッドバイ』矢作俊彦

ロング・グッドバイ
矢作俊彦著

出版社 角川書店
発売日 2004.09
価格  ¥ 1,890(¥ 1,800)
ISBN  4048735446
神奈川県警・二村永爾は、殺人事件の重要参考人ビリーの失踪と関わった嫌疑で資料部に配置変えされた。事件直後、台湾で墜落した密航飛行機を操縦していたらしいビリーは、二村宛に鞄を残していた…。ハードボイルド探偵小説。 [bk1の内容紹介]

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 主人公の二村永爾が好きなんだよね。ちょっとキザだけど。(キザってのも最近は死語か?)
 二村シリーズは3作目で、刑事の休日に事件に関わるという趣向がオサレ。警察手帳を使わずに捜査をするのである。
 しかし、今作では休日だけでは片づかなかったようで。
 タイトルの「ロング」はLongではなくWrong。もちろんタイトルからわかるように、御大チャンドラーの名作『ロング・グッドバイ』へのオマージュになっているので、オチはある程度わかってしまうが、それは些末な問題。そして、きっちりと「日本」というものの病んでる部分を浮き上がらせているのも矢作作品の魅力。
 なお、前2作は新刊では入手困難な模様。一応amazonにデータがあったので貼り付けときます。

 1作目:リンゴォ・キッドの休日ハヤカワ・ミステリ文庫
 2作目:真夜中へもう一歩

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